eKYC導入で陥りがちな落とし穴と対策

株式会社Liquid
目次
はじめに
2027年4月に予定されている犯罪収益移転防止法施行規則の改正(携帯法は2026年4月に改正)により、ホ方式(本人確認書類の撮影・アップロード方式)は廃止されます。
※2027年「ホ方式」廃止後に導入すべきeKYCとは
今後はICチップを活用する方式が前提となり、事業者はシステム刷新と運用再設計を迫られます。
しかし、単に新しい方式を導入すればよいわけではありません。ICチップを利用した方式にはそれぞれメリットがある一方で、運用上の思わぬ「落とし穴」が存在します。
こうしたポイントを見落とすと、想定以上のユーザー離脱やコスト増につながり、結果的に本人確認プロセス全体の信頼性を損ねるリスクがあります。
本記事では、カ方式・へ方式・ル方式を中心に、実際の導入や運用において事業者が陥りやすい落とし穴を徹底的に整理します。
落とし穴を理解する意義
落とし穴を理解することは「方式を選ぶ」という視点以上に重要です。
なぜなら、方式ごとの長所を生かす設計をしても、運用段階で発生する例外処理やユーザー操作のつまずきにより、全体の体験や効率が崩れるからです。
- UX低下:暗証番号を忘れた、IC読取ができないなど、想定外の操作でユーザーが離脱。
- セキュリティリスク:セルフィー容貌画像を省略した運用や、証明書失効を見逃したフローでは、不正申請が通る余地が残る。
- コスト増:目視対応が多発し、審査部門のリソースが逼迫する。
ベストプラクティスを考える前に、まずは「どんな落とし穴が存在するか」を把握しておくことが欠かせません。
カ方式(JPKI)の落とし穴
カ方式は国民カバレッジが広い反面、暗証番号依存に大きなリスクがあります。
- 暗証番号忘れや証明書失効
暗証番号忘れで3〜5割が離脱するという統計がある。さらに、2025年以降はマイナポイント施策で発行された電子証明書が失効を迎えるため、さらに離脱が増加する見込み - 第三者申請リスク
カードと暗証番号が揃えば不正利用が可能。セルフィー容貌画像を追加しなければ、アカウント転売などの不正を防げない - 審査部門の負担
94%は自動化できるものの、6%は証明書失効により、別の方式を案内する必要がある
へ方式の落とし穴
マイナンバーカード利用時
- 外字問題
IC内データは外字が常用漢字に変換されることがあり、齟齬が生じる。券面画像との突き合わせを怠ると、本人確認の正確性を欠く
運転免許証利用時
- 暗証番号忘れ
利用者が4桁×2の暗証番号を失念すると即離脱。3回誤入力でロック - 変更情報の扱い
住所や氏名変更は電子署名が付与されず、改ざん可能。これを「受け入れる/エラー扱い」にするかは事業者の判断に委ねられるが、誤った設計は不正リスクを高める
在留カード/特別永住者証明書利用時
- 裏面住所の真正性確認
ICには表面画像しか格納されておらず、法改正後は裏面に記載住所での本人確認は不可になる予定。 - 自動化
IC内に格納されている表面情報で本人確認を自動化するかは事業者の判断となる
ル方式の落とし穴
ル方式は直感的なUXと高いセキュリティを持つ一方で、以下の課題があります。
- 利用可能ユーザーが限定的
Apple Walletに事前登録したiOSユーザーしか対象にならず、Google Walletは2026年秋予定。利用者層によっては導入効果が限定的 - 普及度に左右される導入効果
若年層やiOSユーザーが多いサービスなら有効だが、幅広い層を対象とする事業者では導線として機能にしにくいリスクあり
共通して見られる落とし穴
方式に関わらず共通して陥りやすい落とし穴も存在します。
- セルフィー容貌画像省略のリスク
セルフィー容貌画像を省略すると、なりすましリスクが高まる傾向にあります。 - 例外処理の軽視
外字の扱いなどを想定しないと、目視が追いつかず誤認証を許す恐れや審査遅延があります。 - 多端末環境の不備
特にAndroid端末ではチップの位置が分かりにくく離脱が多発します。
ユーザー体験を阻害する典型シナリオ
- 暗証番号を思い出せず入力できない
- ICチップをどこにかざせばよいかわからない
- 住所変更がICに反映されていない
こうした場面で適切な代替導線がないと、離脱やクレームが発生します。
運用負担に直結する落とし穴
- 目視対応の過小評価
「数%だから大丈夫」と考えると危険。大規模申込では数%でも数千件~数万件単位の作業となる。 - OCR精度への過信
OCRで読み取れない場合の目視体制を確保していないと、ボトルネックが生じる。
業界別に見たリスクの現れ方
- 金融:不正防止が最優先。セルフィー容貌画像省略は致命的。
- EC:UXが重視されるため、暗証番号忘れ対応が課題。
- シェアリング:即時性が重視されるため、在留カード処理がボトルネックになりやすい。
- 通信:件数が膨大なため、数%の目視でも運用負担が致命的になる。
LIQUID eKYCで落とし穴を回避するための工夫
- 外字対応機能で齟齬を自動検知
- ICおまかせパックにより、ユーザー端末に応じて最適導線を自動提示
- セルフィー容貌画像併用で不正申請を抑止
まとめ
ICチップ方式はホ方式よりも確実に進化していますが、導入や運用での「落とし穴」を放置すれば、利便性もセキュリティも損なわれます。
- カ方式は暗証番号依存が最大の落とし穴
- へ方式は外字対応が課題
- ル方式は普及度依存で限定的
- 共通の落とし穴はセルフィー容貌画像省略、例外処理軽視、端末UX問題
これらを事前に理解し、適切な導線設計と体制整備を行うことで、初めて「制度改正に強いeKYC運用」が実現できます。
2027年の法改正に向け、eKYCの仕組みを早めに検討・刷新することが求められています。
LIQUID eKYCは、金融機関や大手事業者で数多くの導入実績を持ち、法令対応からユーザー体験改善まで支援可能です。
詳細な導入方法や運用に関するご相談は、以下よりお問い合わせください。

Liquidは、生体認証を活用し、認証を空気化することで、世界約80億人全ての人があるがままの状態であらゆるサービスを簡単・安全に使える、なめらかな世界の実現を目指しています。また、金融の取引時確認(犯罪収益移転防止法)、携帯電話契約(携帯電話不正利用防止法)、中古品買取(古物営業法)、不動産取引、CtoC取引などにおける本人確認のオンライン化の流れに合わせ、業界や導入事業者をまたがって横断的に不正検知を行う仕組みを提供し、利便性とセキュリティの両面を追求して参ります。





