ユーザー離脱を防ぐeKYC UX設計の勘所

株式会社Liquid
目次
はじめに
金融サービスや携帯電話の契約、ECサービス等のオンライン化が進む中で、本人確認(eKYC: electronic Know Your Customer)の重要性はますます高まっています。
日本では「犯罪による収益の移転防止に関する法律(犯収法)」や「携帯電話不正利用防止法(携帯法)」などの関連法規に基づき、非対面での本人確認手法が整備されてきました。
しかし、2027年4月に予定されている犯収法施行規則の改正(携帯法は2026年4月1日に改正)により、長らく多くの事業者が採用してきた ホ方式(本人確認書類の撮影+容貌の撮影) は廃止されます。
※2027年「ホ方式」廃止後に導入すべきeKYCとは
これまで多くのサービスで採用されてきたホ方式は、撮影を中心としたシンプルなUXにより、ユーザーが迷いにくく、離脱率も比較的低い方式でした。
一方、今後主流となるICチップ方式では、ユーザーが普段慣れていない操作が求められるため、適切なUX設計を行わないと離脱が増える傾向があります。
本記事では、IC方式に移行する際に発生しやすいユーザー離脱の要因を整理し、どのようなUX設計を行えば完了率を維持・向上できるのか、その考え方と具体的な工夫例を紹介します。
ホ方式とIC方式の違い
これまで多くの事業者で採用されてきたホ方式は、スマートフォンで本人確認書類を撮影し、そのまま申請できるシンプルな方式でした。
ユーザーが判断すべきポイントが少なく、操作も直感的であるため、比較的離脱が発生しづらいという特徴がありました。
一方、IC方式は以下のような点でホ方式と異なります。
-
アプリをインストールする(LIQUID eKYCではiPhoneはAppClip(safariブラウザ)にてインストール不要)
- NFCにかざす位置を探す
- 暗証番号の入力が必要
- iOSとAndroidで読取方法が異なる
- 読取位置が端末ごとに異なる場合がある
- アプリの起動や事前準備が必要なケースがある
ホ方式と比べるとユーザーが判断しながら進める工程が増えるため、適切な設計がなされない場合、途中で操作を中断してしまうケースが想定されます。
IC方式で離脱が発生しやすい理由
IC方式では、ホ方式と比べてユーザーが自分で判断しながら進める場面が増えるため、UXの難易度が高まりやすくなります。
代表的なものとして、次のような操作が新たに発生します。
初めて経験する操作が多い
NFC読取の経験があるユーザーは多くありません。
正しい位置にかざす、一定時間保持するなど、直感的ではない操作が含まれます。
カ方式は暗証番号・証明書に関するハードルが存在する
暗証番号を忘れている、証明書が失効している、といった状況は珍しくありません。
この場合、ユーザー自身では解決が難しく、離脱につながりやすくなります。
端末や環境による差が大きい
-
iPhoneとAndroidで操作方法が異なる
- 機種ごとにNFCの位置が異なる
- ケースの材質や形状で読取が失敗することがある
ホ方式のように“どの端末でも同じ”という設計ではないため、表示方法や案内を工夫しない場合にミスが発生しやすくなります。
離脱を抑えるためのUX設計の考え方
IC方式のUXは、設計次第で大きく成果が変わります。
多くの事業者の事例から見えている「成功するUXの共通点」は以下の通りです。
まずは「判断させない」設計にする
ユーザーに方式選択や操作判断をさせると離脱が増えます。
-
IC読取チャネルの自動振り分け
- OS/ブラウザによる分岐の自動化
- カ方式が失敗 → 自動でへ方式へ切り替え
これらをシステム側が持つことで、ユーザーは迷わなくなります。
つぎに「間違えにくい」導線を用意する
-
NFC読取の案内
- 容貌撮影の成功例/失敗例の提示
- ユーザー端末に最適な読取方法を案内
IC方式は“正しく操作すれば成功率は高い”方式であるため、迷わない導線設計が最も効果的です。
最後に「失敗からやり直せる」状態をつくる
例:
× 「読取できませんでした」
○ 「スマホケースの金属パーツが干渉しています。外して再度お試しください」
× 「明るさが不足しています」
○ 「顔全体に光が当たる場所に移動し、白飛びしないよう調整してください」
失敗→再挑戦につながる設計が重要です。
IC読取で特に発生しやすい課題
IC方式では、ユーザーがつまずくポイントが想定以上に多く存在します。
主要な離脱ポイントは以下の通りです。
- NFC位置が分からず読取が安定しない
- スマホケースやリングが干渉する
- 暗証番号を複数回誤りロックされる
- 容貌撮影時に明るさ不足や白飛びが起きる
- 首振り等のアクションが伝わらず再撮影が必要
- アプリの起動やストア遷移で操作が途切れる
こうした課題は、個別に見ると小さなつまずきに見えますが、積み重なると大きな離脱要因になります。あらかじめ洗い出したうえで、UX改善の優先順位をつけて対応していくことが重要です。
UX改善に向けた具体的な取り組み
多くの事業者が成果を出している施策の中でも、特に効果の大きいものを紹介します。
端末ごとの自動判定による読取チャネルの振り分け
ユーザーの端末環境に応じて、利用可能なIC読取方法を自動で判定し、最も離脱率が低いチャネルに自動誘導する方式は非常に効果があります。
例:
- iOS(Safari)の場合は App Clip を起動
- Androidの場合はアプリでのIC読取へ誘導
- カ方式が利用できない場合は、へ方式に遷移させる設計
- ル方式が利用可能な場合は、優先的に案内
ユーザーに“どれを選ぶべきか”を考えさせないことが重要です。
ICチップ自動探索機能で読取位置を迷わせない
- NFC位置を自動探索
- バイブレーションで「ここです」と通知
LIQUID eKYCの特許出願済みの「ICチップ自動探索機能」により、LIQUID eKYCでのへ方式の離脱率は10pt 程度改善した事例も見られています。
“改善行動につながるエラー”を提示する
例:
- 「カメラが暗いため顔が認識できません。明るい場所に移動してください。」
- 「スマホケースを外してカードを背面上部にあててください。」
ユーザーが“何をすれば成功するのか”を理解できる設計が重要です。
へ方式(IC+容貌撮影)の有用性
IC方式の中でも、2027年以降のUX設計で最も重要な方式が へ方式(IC読取+容貌撮影) です。
その理由は以下の通りです。
- 暗証番号の入力が不要
- 対応書類が多く、幅広いユーザーをカバーできる
- 容貌撮影と組み合わせて高い不正防止効果が期待できる
- App Clip等と併用することでアプリインストールを不要にできる
カ方式のみの場合、暗証番号の入力や証明書の失効により30〜50%の離脱が発生しうるため、へ方式との併用が推奨されます。
まとめ
IC方式は、ホ方式と比較して操作の複雑さが増える一方、UX設計を工夫することで完了率の向上が期待できます。
- 方式選択やチャネル選択は可能な限り自動化する
- 読取位置や端末依存の差を吸収する仕組みを用意する
- 失敗時には理由と改善方法を提示する
- カ方式はへ方式と併用する
こうした取り組みを積み重ねることで、IC方式でもユーザーが迷わず完了できるフローを設計していくことができます。
LIQUID eKYCは、金融機関や大手事業者で数多くの導入実績を持ち、法令対応からユーザー体験改善まで支援可能です。
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Liquidは、生体認証を活用し、認証を空気化することで、世界約80億人全ての人があるがままの状態であらゆるサービスを簡単・安全に使える、なめらかな世界の実現を目指しています。また、金融の取引時確認(犯罪収益移転防止法)、携帯電話契約(携帯電話不正利用防止法)、中古品買取(古物営業法)、不動産取引、CtoC取引などにおける本人確認のオンライン化の流れに合わせ、業界や導入事業者をまたがって横断的に不正検知を行う仕組みを提供し、利便性とセキュリティの両面を追求して参ります。





